■ダンデライオン■
晴れた昼下がり。 政宗は日当たりのいい広場でゴロゴロと昼寝をしていた。 最近みつけた、隠れ家のような場所だ。 丁度山の頂上にあり、周りには木が生えていて外からは見えにくい。 その広場だけがぽっかりと開いた穴のようで、地面には絨毯のように草が生えていた。 誰も来ない、誰にも邪魔をされない場所。 何も考えずに住むこの場所は、政宗にとって唯一の休息場所だった。 (うぅん…) 一つ寝返りをうった。 草の冷たい感触が気持ちいい。 青臭い草の匂いと、土の匂いが鼻腔をくすぐった。 くぅくぅと眠る可愛い姿を見ているのは自然の生き物だけだ。 柔らかい髪が、春の風にさわさわと揺れる。 その時。 ピクリ、と耳が動いた。 誰か来たようだ。 ゆっくりと目をあける。 この場所を知っているのは政宗以外ではたった一人しか知らない。 (小十郎…か) まだ眠い体を起こそうとした。 …が。 (…あれ?) 政宗は、何か違和感を感じた。 視線が低いと感じるのはいつものことだ。 しかし。 今は一段と低い気がする。 政宗は辺りを見回してみた。 …やはり、視線が低い。 次第に小十郎の足音が近づいてくる。 草の茂みを掻き分けて、小十郎が顔をだした。 「政宗様〜?そろそろお戻りになる時間ですよ?」 政宗は小十郎を見上げた。 「…あれ?」 小十郎はキョロキョロと辺りを見る。 が、政宗の姿がない。 「政宗様…?」 政宗は、そこにいた。 小さな体を従えて。 足音もなく小十郎に近づく。 そして、小十郎の足元に、体を摺り寄せた。 「…猫?」 「にゃ〜ん」 (小十郎!) 「にゃー!」 (わしだ!) 小十郎は驚いた顔をした。 片目がない猫。 まだ小柄で、小十郎の片手にすっぽりと入りそうな。 猫。 「…政宗、様?」 「にゃーん!(そうだ!)」 「…まっ…?…!?……!!??」 小十郎は慌てた。 まぁ、無理もないだろう。 突然、主人が猫になったのだから。 |
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